地球が中心か、太陽が中心か…。

昨日の読売新聞にて取り上げられたこの問題であるが、そもそも質問内容自体が破綻しているのではないかと思うのは私だけであろうか?
この問題について論じる際にまず考えねばならないのは、2体問題における基準(→基底、座標)を如何に定めるかということである。これは人それぞれ異なる部分であり、我々物理屋が常に叩き込まれてきたことは「モデル化し易くなるように基準を定めよ」という、極めて漠然とした方針のみであった。即ち、基準なんぞ何処に取ろうが勝手なのである。

さて、ここでそもそもの議題に話を戻すこととしよう。地球と太陽の2体問題において、地球を中心とするのが正しいのか、太陽を中心とするのが正しいのか? これはガリレオの「それでも地球は回る」という有名な一節にも表わされているように、地球より圧倒的に質量の大きい太陽を中心として複数の惑星による‘太陽系’が成立していることを考えれば、確かに地球は太陽の周りを回っていることになる。
しかし、ここで地球中心の座標系を想定したとするならば状況は一変する。今回与えられているのは太陽系全体としての多体問題ではなく、あくまで地球と太陽の2体問題なのである。地球中心の座標を取るという流儀もあって然るべきであり、この場合は太陽が地球の周りを回っているものと認識され得る訳である。

このような曖昧な問題をいかなる意図で小学生へ出題したのか、その真意を知る術は私には無い。しかし唯一はっきりとしていることは、今回の『謎掛け』が柔軟性を著しく欠いた思考の下に作成され、未来を担う子供たちに対して凝り固まった知識だけを押し付ける結果しか残せなかったという事実である。
自分の思い込みだけを中心にしか物事を考えられなくなっては、研究者として失格である。そのような大人にだけは、私はなりたくないと思うのである。

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